公開: 2023年3月19日
更新: 2023年4月12日
プラトンとアリストテレスは、ほぼ同時代に生きた古代ギリシゃの哲学者です。ソクラテスやプラトンがアテネ人だったのに対して、アリストテレスはマケドニア人でした。その影響もあり、プラトンは、アテネ人の思想家らしく、絶対的な真理を求める傾向がありました。それに対してアリストテレスは、物事を相対化して考え、最も合理的であると考えられる案を選択することを推奨しました。アリストテレスは、アレクサンダー大王が若い時、家庭教師をしたとされています。
プラトンは、ピタゴラス学派に学んだこともあり、数学的な思考方法こそが、人間が誤りを起こさない方法であると信じていたようです。数学では、個々の問題を考えるのではなく、現実の様々な問題から、それらに共通する問題を抽象化し、その抽象化された問題の解を考えます。例えば、面積がない点や、幅のない線などです。そのような点や線は、現実には存在しませんが、そのような点や線を考えることで、数学は誤りなく、問題を解決する方法を議論できるのです。プラトンは、そのような数学のやり方から、哲学の思考方法を考えました。
それに対して、アリストテレスは、現実には存在しない抽象化された問題を考えても、その解法が実際に役立つ保証はないとして、あくまで個々の現実の問題の特性に焦点を当てて、物事を考えるべきだとしました。このことは、アリストテレスの考え方が、非常に「現実的」であったことを示しています。例えば、「奴隷制度」については、アリストテレスは、それを認める態度でした。それは、古代ギリシャにおいては、それが社会の仕組みだと考えられていたからです。現代社会では、奴隷制度は認められません。それは、人間の自由と平等の普遍的な原則から考えて、社会が封建的な奴隷制度を認められないからです。
アリストテレスの思想を学んだアレクサンダー大王は、征服した土地の自治を地域の人々に委ねる政治を行うなど、ギリシャ的な政治体制を現地の人々に押し付けることをしなかったため、軍事だけに集中して戦争を継続することができたそうです。これは、アリストテレスの思想に沿ったもので、何が正しいかは、場所によって異なると言う、アリストテレスの思想に基づいたものであったと言えます。アリストテレスの思想は、現実に妥協的な考えでした。
プラトンの思想とアリストテレスの思想は、現代社会でも個々の場面で、別々の人々に支持され、応用されています。最近では、現実に適合することから、アリストテレス的な考え方を支持する人々が多くなっているようです。しかし、数学者や哲学者の中には、絶対的な真理を求める人も多く、コンピュータ科学の分野でも、プラトン的な考え方を主張する人々は、少なくありません。また、システム工学でも、システム設計において、プラトン的な思考とアリストテレス的な思考を融合した方法を推奨した人が居ます。